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秋山郷再訪の記

*会員サトヤンからの投稿です。

 長野県の最北部と新潟県の境、中津川渓谷沿いに、日本でも有数の秘境と言われる「秋山郷」があります。去年初めてここを訪れて以来、気になることがあってまた今年、訪ねてしまいました。

       ◇

 去年は秋の紅葉を求めて10月中旬、信州中野から志賀高原、奥志賀高原を経て雑魚川林道を走り、「秋山郷」の最上流部である「切明」におりたあと、西にそびえる鳥甲山(とりかぶとやま)のふもとに点在するいくつかの集落を訪ね、ほぼベストシーズンの紅葉を堪能しました。
 そのとき、宿のおかみさんから「保育園があるけど今は秋山中で園児が1人だけ」と聞かされ、「1人だけの保育園とはどんなものなのか?」と気になり始めた同業者の家内と翌日、つい立ち寄ってみたのです。

 私たちが車を止めたとき、建物の横の神社の境内で数人の大人としゃべりながら飛び跳ねている一人の男の子の姿がありました。これがその「1人だけ」の園児でした。
 私たちは保育士さんとその子の2人だけになったタイミングを見計らって声をかけ、15分ほど話をしました。保育士さんはその子を遊ばせながら、焼き芋の準備をしているようでした。
deai.jpg

 焼き芋が出来上がる前にそろそろ帰ろうとしたとき、その子は人懐こそうに「食べていかないの?」と声をかけてきました。
 思いがけないことばに私たちは戸惑い、「突然押しかけてきて、楽しみにしていたお芋までいただいては申し訳ない」という気持ちが先立ち、その申し出をやんわりと断り、次の場所へと向かいました。

 しかし、私たち2人のなかに、そのあと、私たちの行動は素直に一緒に食べようと誘ってくれたその子の気持ちを傷つけてしまったのではないか、という後悔の念が広がってきたのです。それで焼き芋の分け前は減っただろうけど、一緒に食べることの方がその子にとってはうれしいことだったのかもしれない、と。とっさに素直な気持ちを受け取ることのできなかった自分たちの”穢れ”を恥じるような気持ちになったものでした。

 こうして、このときのやり取りは、私たちにとって紅葉の絶景や少し怪しげな民俗資料館、突然道に出てきたカモシカの姿、はたまた“酷道”とも言われるほど狭い国道405号線以上に、「秋山郷」を印象づける出来事となりました。

 その2か月ほどあと、家内はA保育園にあてて、手紙と少しばかりのお菓子を送りました。
 そしてしばらくしてB君が書いた絵と保育士さんからの返事が届いたのです。

 これが『一期一会』というものかも知れない。自分ではそう思っていました。


torikabuto.jpg
▲郷の西側にそびえる鳥甲山(とりかぶとやま)とその裾野に広がる樹海。杉の人工林も多い。
 
amaike.jpg kouyou.jpg
▲秋山郷随一の景勝地 天池から鳥甲山を望む  ▲中津川渓谷と紅葉

kouyou2.jpg koakazawa.jpg
▲ 雑魚川林道沿いの紅葉と滝          ▲秋山郷の中心部小赤沢集落と東の苗場山

       ◇

 去年は、「秋山郷の紅葉を見てみたい」と言いだした私の提案に、「地震が心配‥」と出かけるまで否定的だった家内が、「今年もあそこへ行きたい」と言い出し、日程が決まったのは出かける日の前日でした。
 今年は朝7時に出かけ、最短時間で行ける豊田飯山IC、国道117号線経由で飯山、栄村中心部からいったん新潟県津南町へ入り、秋山郷の中心である小赤沢集落に着いたのは午後1時過ぎ、片道360kmの道のりでした。

 「『もう来るかなあ』と待ってましたけど、昼寝の時間に入っちゃいました」という保育士さんと再会を喜び合い、彼女と家内は園のようすや地震(※)が大変だった話で盛り上がっていました。
 そのうちに、B君が起き出し、しばらくして、もう一人のC君も眠そうな目をして起きてきました。今年は園児2人に増えていたのです。

(※3.11の翌日3.12の未明、3:59に起きたM6.7の長野県北部地震のこと。最も被害の大きかった栄村では震度6強を記録した。)
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▲園内を駆け回る2人の園児          ▲A保育園はこの建物の一角にあるが神社の境内
                           が園庭がわり。

 保育士さんは同じ栄村でも国道117号線沿いの村中心部から毎日ここまで約30km近くを登ってくるのだそうです。
 405号は国道とはいえ、ところどころに「この先100mすれ違えます」という看板があるような狭い道です。しかも、一歩間違えばそこは中津川渓谷の川底。ここが日本でも有数の豪雪地帯(特別豪雪地帯)であることを思うと、通うだけでも私たちの想像を絶する重労働に違いありません。
 「最高ランクの通勤費をもらってますから」と明るく笑った保育士さんでしたが、仕事とはいえ頭が下がる思いでした。

keikoku.jpg ta.jpg
▲秋山郷はこの中津川の上流部に連なる長野  ▲9月中旬、まだ、稲刈りは始まったばかり。
 県側5、新潟県側8合わせて13の集落の    もちろん、田んぼの面積は少ない。
 総称で平家の落人伝説が伝わる。

 B君の家は民宿を営んでいて、お父さんは秋山郷でも数少なくなった「熊撃ち」の1人で、例年だと年に数頭の熊を撃つのだそうです。
 「大きくなったらボクも熊撃ちになる」と日ごろから口にしているというB君は、最近一人で自転車に乗れるようになったといって、近くの民宿に泊まった私たちに翌朝、その勇姿を見せてくれました。

 片道400kmも離れた秘境との距離が、私たちのなかでまたひとつ縮まったような気がしました。

nunoiwa.jpg kosumosu.jpg
▲長野県側で唯一左岸に残る屋敷集落の上に  ▲民家の庭先にはアジサイの名残りとコスモス
 そびえる布岩は典型的な柱状節理地形      が同居

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▲民宿の夕食に出された熊肉のなべ。余分なことながら家内は完食、
 私は少し残しました。

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